医薬分業の進展と薬剤師国会議員の活躍

昭和49年の診療報酬改定において医師の処方箋料が大幅に引き上げられ(6点→50点)、医薬分業は本格的な実現に向けて動き出し(いわゆる医薬分業元年)、その後も医薬分業の進展に大きな影響を与える施策が、着々と実施されていきました。
その背景には、薬剤師の資格を有する国会議員たちの地道な政治活動がありました。

昭和49年以降に、医薬分業の推進と薬剤師職能の確立に奮闘した歴代薬剤師国会議員は以下のとおりです。

医薬分業を進展させた施策

① 昭和60年 地域医療計画に薬局 医療法改正、地域医療計画に薬局が記載
②   同 モデル分業実施 医薬分業推進モデル事業実施、予算化
③ 昭和61年 国立病院の院外処方箋発行開始 モデル国立病院、院外処方箋発行開始
④ 平成4年 医療の担い手 医療法改正、薬剤師は医療の担い手と明記
⑤ 平成6年 在宅医療への参加 薬剤師の在宅訪問管理指導料の新設
⑥ 平成8年 調剤時の情報提供 薬剤師法に調剤時の情報提供義務が規定
⑦ 平成9年 国立病院の院外処方箋の発行促進 モデル病院、70%発行を目指す
⑧ 平成12年 介護保険法施行 薬剤師も在宅介護に参加
⑨ 平成16年 薬学教育6年制 40年来の夢、実現
⑩ 平成18年 医療提供施設 医療法改正で、薬局が医療提供施設として明記
⑪ 平成25年 薬学的知見に基づく指導 薬事法、薬剤師法に薬剤師の薬学的知見に基づく指導義務が規定
⑫ 平成28年 かかりつけ薬剤師の評価 かかりつけ薬剤師指導料、同包括管理料の新設
⑬ 令和元年 薬剤師・薬局の機能と役割の明確化 薬機法に薬剤師の職能と薬局の基本的機能が明記され、特定の機能を有する薬局の認定制度が創設

昭和49年以降の医薬分業率の推移に医薬分業を進展させた施策を重ねあわせたものを以下に示します。

処方箋受取率(分業率)の推移と医薬分業推進施策

主な施策として、医療法における薬剤師と薬局の位置づけ、薬学教育6年制の実現、情報提供義務と薬学的知見に基づく指導義務、薬剤師・薬局の機能と役割の明確化について解説します。

医療法と薬局、薬剤師

平成4年、医療法第2次大改正において「医療の基本理念」の条文が設けられることとなり、政府案ではその他の医療の担い手としてひとくくりされていた薬剤師が、「医療の担い手」として明記されました。

そして、平成18年の医療法第5次改正では、薬局は「医療提供施設」としての位置づけがなされました。

医療法

第1条の2 医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに、その内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。(平成4年改正)

 医療は、国民自らの健康の保持増進のための努力を基礎として、医療を受ける者の意向を十分に尊重し、病院、診療所、介護老人保健施設、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)、医療を受ける者の居宅等において、医療提供施設の機能(以下「医療機能」という。)に応じ効率的に、かつ、福祉サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図りつつ提供されなければならない。(平成18年改正)

薬学教育6年制の実現

薬剤師教育の強化は、医薬分業推進のための重要な要因であり、昭和42年、日本薬剤師会は薬学教育協議会及び薬剤師国家試験審議会に対し、「薬学教育の改善について」要望書を提出しました。

平成6年、厚生省、文部省、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会による「薬剤師養成問題懇談会」(4者懇)が設置され、平成11年には国公立薬学部長会議、日本私立薬科大学協会が加わり(6者懇)、薬学教育6年制について審議が行われました。

平成14年、自由民主党薬剤師問題議員懇談会は、日本薬剤師連盟の要請を受けて「薬学教育検討チーム」を設置し、「6年制の一貫教育が必要」との結論をまとめ、厚生労働省、文部科学省に6年制促進を求めました。同年、厚生労働省の「薬剤師問題検討会」、文部科学省の「薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」はそれぞれ6年制教育が必要である旨報告をまとめました。

平成16年3月、政府は学校教育法、薬剤師法の改正二法案を国会に提出し、衆参両院ともに全会一致で可決、成立しました。

情報提供義務と薬学的知見に基づく指導義務

平成8年、薬剤師法改正において「薬剤師の情報提供」義務が規定されました。
そして、平成25年の薬事法の改正において、薬局開設者の義務として薬剤師に「薬学的知見に基づく指導」を行わせることが規定され、薬剤師法においても、薬剤師の「薬学的知見に基づく指導」義務が規定されました。

薬剤師法

第25条の2 薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。

令和元年の改正では同条に第2項が新設され、服薬状況の継続的な把握と服薬指導が義務化されました(次項参照)。

薬剤師・薬局の機能と役割の明確化

令和元年、薬機法が改正され、薬剤師の職能と薬局の基本的機能が再定義され、薬局の認定制度が導入されることとなりました。

薬剤師の業務に関する規定の見直し
薬物療法の最適化のため、薬剤師が必要に応じて、調剤時のみならず薬剤の服用期間を通じて患者の服薬状況の把握や服薬指導を行い、その内容を記録することが義務化されました。
薬剤師が把握した患者の服薬状況などの情報を他の医療提供施設の医師などに提供することが薬剤師の努力義務となりました。
薬剤師法においても、継続的な服薬状況の把握と服薬指導が義務化され、調剤録の位置付けが明確となりました。
薬局の定義の見直し
調剤を行う場所とされていた薬局の定義について、要指導医薬品や一般用医薬品を含むすべての医薬品の適正な使用に必要な情報の提供と薬学的知見に基づく指導を行う場所であることが、明確に規定されました。
特定の機能を有する薬局の認定
入退院時の医療機関等との情報連携や在宅医療等に地域の薬局と連携しながら一元的・継続的に対応できる薬局(地域連携薬局)と、がん等の専門的な薬学管理に関係機関と連携して対応できる薬局(専門医療機関連携薬局)について、患者が自身に適した薬局を選択できるよう、都道府県知事による認定制度(1年ごとの更新)が導入されることとなりました(令和3年8月施行)。